脳血管内治療

脳血管内治療とは

脳血管内治療とは一般的にそけい部(足の付け根)または腕の血管から頚部・頭部の血管までカテーテル(細く長い管)を挿入し血管の内側から脳・脊髄および頭頚部病変の治療を行う方法です。脳血管内治療では開頭手 術のように皮膚を切ったり頭蓋骨を開けたりする必要もないため低侵襲で、入院期間も短く予定手術では約1週間です。
脳血管内治療の対象は脳動脈瘤(コイル塞栓術)、硬膜動静脈瘻(塞栓術)、脳動静脈奇形(塞栓術)、頚動脈狭窄症・鎖骨下動脈狭窄症および椎骨動脈狭窄症(ステント留置術)、および急性期の脳梗塞(脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法)です。脳腫瘍や脳動静脈奇形に対する開頭手術の前に塞栓術を行い、病変への血流を減らすことで手術をより安全にすることも可能です。その他、脊髄や顔面の血管病変(動静脈瘻・動静脈奇形など)の治療も行うことができます。

 

 

未破裂脳動脈瘤に対する血管内治療

一般的な未破裂脳動脈瘤に対する血管内治療はコイル塞栓術です。カテーテル(治療に使用される細い管)を通して血管の内側から動脈瘤の中にコイルを入れて動脈瘤を閉塞させる治療です。動脈瘤の形状によってはコイルが動脈瘤の外に出てくるのを防ぐため、バルーンやステントなどを併用することがあります。動脈瘤に到達する方法が開頭手術と異なるため、開頭手術が困難な深部の動脈瘤にも到達しやすいことが多いです。一方で、コイル塞栓術後の動脈瘤の再発リスクは開頭クリッピング術よりも高いとされています。近年ではバルーンやステントを使用し、動脈瘤をより密に充填することで再発リスクは低下しつつあります。

 

症例

脳ドックで発見された未破裂脳動脈瘤(最大径6mm)の患者さんです。治療を希望され、コイル塞栓術を行いました。バルーンでコイルが動脈瘤の外に出てくるのをおさえながら計5本のコイルを用いて治療し、合併症なく退院されました。外来でMRIでの経過観察を行っていますが、動脈瘤は完全に閉塞された状態で安定しています。

赤矢印:動脈瘤

動脈瘤内に留置されたコイル

 

 

頚動脈狭窄症に対する頚動脈ステント留置術

頚動脈ステント留置術は一般的には局所麻酔で行われます。まず脳梗塞の原因となるプラークの破片など(デブリ)が飛散するのを防ぐための器具(フィルターまたはバルーン)を狭窄部より先に留置します。必要に応じてバルーンを拡張させ狭窄部位を拡張させた後、ステントを狭窄部に留置します。ステントを置いた後にもバルーンを用いて狭窄部を拡張すると同時にステントを動脈に密着させます。

 

症例

脳梗塞の精査中に指摘された頚動脈狭窄症の患者さんです。外来で経過をみていましたが、狭窄が徐々に進行したため治療を希望されました。当科で検討した結果、この患者さんには頚動脈ステント留置術の方が適していると判断し、頚動脈ステント留置術を行いました。術後は特に合併症はみられず退院されました。

長矢印:狭窄部、短矢印:フィルター(脳梗塞を予防するためのデバイス)

ステント留置、およびバルーンによる狭窄部の拡張

ステントが留置され狭窄が改善されました。

 

 

硬膜動静脈瘻に対する塞栓術

硬膜動静脈瘻とは脳を覆う硬膜の動脈と脳の静脈が異常につながることで静脈への血流量が増加し脳の静脈の流れが障害される疾患です。拍動性の耳鳴りの原因となったり血流のうっ滞によるさまざまな症状(頭痛、言語障害、麻痺、認知機能低下など)や脳出血がみられることもあります。これらの症状を予防したり緩和したりするために治療を行います。治療の適応を判断するためには、CTやMRIなどの一般的な検査以外に、動脈にカテーテルを入れて行う脳血管撮影という検査が必要になります。この検査で動脈からの血流が脳静脈へ逆流していることが明らかになれば、過去の研究から出血のリスクが高く治療が必要と考えられています。逆流の所見がなくても耳鳴りなどの症状を緩和・消失させるために治療を行うこともあります。
硬膜動静脈瘻に対する治療は主に血管内治療で行われます。動脈側からあるいは静脈側から塞栓物質(血管を詰めるためのもの)を用いて動脈と静脈の異常なつながりを閉塞させます。

 

症例

眼球突出・充血、耳鳴りで発症した海綿静脈洞部の硬膜動静脈瘻の患者さんです。海綿静脈洞から脳の静脈への逆流がみられました。この逆流をおさえられるように、静脈側からコイルを用いて脳の静脈を閉塞させた後に、シャント(動脈と静脈のつながり)のある海綿静脈洞を閉塞させました。これにより病変は治癒しました。

脳や目の静脈が動静脈間の異常なつながりにより早期に描出されています。

静脈側からコイルを入れるためのマイクロカテーテルを誘導しています。

留置されたコイル

コイルにより異常な動静脈間のつながりは消失しています

 

 

脳動静脈奇形に対する塞栓術

脳動静脈奇形で血管内治療単独で治癒できるものは多くはありません。一般的には開頭手術または放射線治療と組み合わせて治療を計画されます。血管内治療では細いカテーテル(マイクロカテーテル)を脳動静脈奇形の栄養動脈に誘導し、塞栓物質を用いて異常な血管を閉塞させます。これにより脳動静脈奇形の体積や血流を減らすことで手術や放射線治療がより安全で効果的になります。

 

症例

脳出血で発症した脳動静脈奇形の症例です。出血が大きかったため、まず開頭血腫除去術を行いました。約1週間後に塞栓術を行い、同じ日に開頭手術で脳動静脈奇形を摘出しました。

頭部CT:脳出血(図の白い部分)

脳血管撮影:脳動静脈奇形(赤矢印)

マイクロカテーテル(細いカテーテル)からの造影

注入した塞栓物質

塞栓術・開頭手術後の脳血管撮影:病変は消失しています

 

 

急性期脳梗塞に対する血栓回収療法

脳梗塞は脳を養う血管が詰まって血流が途絶えることで、脳の一部が死んでしまう病気です。近年大規模な研究で超急性期脳梗塞に対する血管内治療の有効性が示され、当院でも積極的に血栓回収療法を行っています。血栓回収療法(血管の内側からカテーテルやステントを用いて血管を閉塞させている血栓を取り除く治療)は発症早期の脳主幹動脈(脳の太い動脈)閉塞による脳梗塞に対して行われ、脳への血流を止めている血栓を取り除き、血流を再開させることで脳を救う治療です。うまくいけば治療前に麻痺や言葉の障害が出ていた患者さんの症状が改善します。

 

症例

言語障害、右片麻痺で発症した急性期脳梗塞症例。左中大脳動脈が途絶しています(左図の赤矢印)。治療後、途絶していた動脈は再開通し(右図の赤矢印、左図と同じ血管を指しています)症状も改善しました。

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