顔面けいれん

顔面けいれんとは

顔面けいれんは、顔の半分が自分の意志とは関係なくピクピクとけいれんする疾患です。
最初は片側の目の周り(眼輪筋)から始まり、徐々に口元(口輪筋)まで広がるようになります。
人前で緊張したり、ストレス、疲れ、強い閉眼運動で誘発される事が多いのが特徴です。
重症になるとけいれんしている時間も長くなり1日中ピクピクして目を開けられず、口元はひきつるように引っ張られ、顔が歪んでくることもあります。長期間けいれんが続いていると、けいれんの無い時には顔面麻痺がみられることもあります。

 

 

顔面けいれんの原因(神経血管圧迫症候群)

脳の血管(主に動脈)が 顔面神経を圧迫することが原因で、神経血管圧迫症候群の一つです。 顔面神経が脳幹から出る部分に動脈がぶつかって神経を圧迫することで 動脈の拍動により神経が刺激されて顔面の筋肉が不随意に収縮して顔面けいれんを起こします。 従って、この原因で起こる顔面けいれんは 必ず圧迫をされている側のみの片側性です。 ごく稀に腫瘍等が顔面神経を圧迫して発症することもあります。

 

 

顔面けいれんの診断と検査

特徴的な片側の顔面のけいれんを呈している患者さんで、MRI検査を行い、神経と血管の関係を確認し、顔面神経が脳幹から出る部分に血管が接している事が確認できれば、診断はほぼ確実と考えます。

 

 

治療法

治療法には、1.薬物治療 2.神経ブロック 3.手術の3つの方法がありますが、根治的な治療は原因を解決する手術治療のみです

 

  1. 薬物治療
    内服薬として、抗けいれん剤の一つであるクロナゼパムがあります。
  2. ボトックス療法(神経ブロック)
    ボツリヌス毒という神経毒をけいれんしている顔面の筋肉に直接注射し顔面の筋肉を麻痺させる事で、顔面のけいれんを抑える治療法です。簡便で一時的には有効な治療ですが、ある期間経つと効果が薄れまたけいれんが始まりますので、根本的な治療ではありません。概ね数ヶ月毎に注射を繰り返す必要があります。けいれんの再発と注射を繰り返していくとやがて顔面神経がマヒして、顔の表情がつくれなくなったり、口からよだれが自然に流れ出てきたりする場合があります。
  3. 外科的治療(微小血管減圧術)
    顔面けいれんは主に血管(後下小脳動脈、前下小脳動脈、椎骨動脈など)による顔面神経への圧迫が原因であるため、この圧迫を解除するとけいれんは治まります。
    耳の後に小さな開頭を行い、手術顕微鏡を用いて観察し、圧迫している血管を神経から離して再び血管が神経を圧迫しないように固定します(Transposition)。手術はABR(聴性脳幹反応)やSEP(体性感覚誘発電位)などの術中神経モニタリング下に行うことで安全性を高めています。また顔面けいれんに伴って発生する顔面神経の異常筋電図(AMR)をモニタリングし、責任血管の移動、圧迫の解除によって、AMRが消失したことを確認し確実な手術を実践しています。手術によって概ね90%程度の患者さんの症状(顔面けいれん)が消失もしくは改善します。術後けいれんが消失する患者さんのうち約70%の患者さんでは術後直ぐに止まりますが、約30%の患者さんでは消失するまで1年ぐらいかかる場合があります。

 

 

当科での最近の手術例

症例1

50歳代女性。右顔面けいれんの患者さんです。MRI画像(左図)では右AICA(前下小脳動脈)が右顔面神経の脳幹から出る部分を圧しています(黄矢印)。手術所見(右図)でもMRI画像と同様に血管が顔面神経を圧している事が確認できました(黄矢印)。

 

責任血管を除けると、顔面神経には血管に圧迫された圧痕がついていました(黄矢印)。
除けた血管(AICA)を フィブリングルー(生体のり)を塗布した樹脂にて,錐体骨に固定しました(右図) 。

術後すぐに、患者さんの顔面けいれんは止まりました。

 

症例2

60歳代女性。左顔面けいれんの患者さんです。MRI画像では左PICA(後下小脳動脈)が左顔面神経を圧しています(黄矢印)。

 

手術所見でもMRI画像と同様に血管(PICA)が顔面神経を圧している事が確認できました(右図:黄矢印)。責任血管を除けると顔面神経には血管に圧迫された圧痕がついていました(右図:黄矢印)

 

責任血管が太いので移動させても容易に固定出来ません。このような場合には短冊状に切った人工血管を巻き付けて(左図)移動させ人工血管を錐体骨の硬膜に縫い付けて血管をつり上げた状態で固定しました(右図)。

術後すぐに,患者さんの顔面けいれんは止まりました。

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