脳動静脈奇形の治療

脳動静脈奇形(AVM)とは

脳動静脈奇形(AVM)とは、脳内で動脈と静脈が毛細血管を介さずに異常吻合を生じている先天性疾患です。吻合部には異常な血管塊(ナイダス)が認められます。通常の脳循環では、動脈-毛細血管-静脈の順に血流が流れますが、AVMでは毛細血管が欠損しているために、流入動脈-ナイダス-導出静脈の順に血流が流れます。動脈の圧と血流が直接静脈に加わるため、ナイダスや静脈に負担がかかります。負担のかかったナイダスや静脈が破裂すると、クモ膜下出血や脳出血などを起こします。また、破裂しなくても、痙攣発作、頭痛、脳虚血発作などを引き起こすことがあります。

 

>AVMのエビデンス

脳動静脈奇形の年間出血率は未出血例で2.2%、出血例では4.5%、全体で3.0%と報告されています。年間出血率を3%とした場合の生涯出血率(生涯にわたり少なくとも1回の出血を起こす確率)は、20歳代では男性で84%、女性で87%、50歳代では男性で60%、女性で68%と算定され、これらの数字が予防的治療を行うか否かの治療方針を検討する上で1つの判断材料とされています。最近の海外の研究(ARUBA研究)では、何らかの侵襲的治療と比較して内科的治療の優位性が示されましたが、長期の効果については未だ結論が出ていないのが現状です。
つまりARUBA研究は未破裂AVMの短期的予後についての評価に過ぎず、AVMの治療では生涯の出血リスクに対する根治を目指す必要があるからです。

 

治療方針の決定

脳動静脈奇形の①大きさ、②周囲脳の機能的重要性、③導出静脈の流れ方を考慮し(Spetzler-Martin分類)、治療に伴うリスクを評価します。個々の症例におけるリスクと治療のリスクを短期的や長期的に検討した上で、患者さんに利益があると判断すれば(侵襲的)治療をお勧めしています。脳動静脈奇形の治療は開頭手術・血管内手術・定位放射線治療(ガンマナイフ)を単独もしくは、それらを組み合わせて行います。外科的治療を行う場合には、血管内手術(塞栓術)と開頭摘出術を組み合わせて行うことが一般的です。

 

手術方法

開頭手術(AVM摘出術)は全例SEP(体性感覚誘発電位)やMEP(運動誘発電位)などの種々の術中神経モニタリング下で行うことで安全性を高め、術中蛍光造影(ICG-ビデオアンギオグラフィー)を行うことで確実な手術を実践しています。
ほとんどの症例で術前に血管内手術による塞栓術を併用することにより、より安全で根治性の高い手術に努めています。

 

当科での最近の手術症例

症例1

40歳代の女性です。非出血例で無症候性です。右側頭葉のAVMでSpetzler-Martin分類のgrade 3となります。ナイダス内に動脈瘤を認め、さらに右内頸動脈にも未破裂脳動脈瘤を認めたため外科的に治療することを希望されました。

塞栓術後の脳血管撮影です。正常の脳を還流している中大脳動脈から側枝として、細かなFeederがナイダスへ入っているため、部分的にしか塞栓術は行えませんでした。

手術写真です(左図)。シルビウス裂内を走行する中大脳動脈から多数のFeederが出て側頭葉のAVMに入っています。右図は ICG-ビデオアンギオグラフィーという術中に行う血管撮影です。

ナイダスへ流入する血管(Feeder)のみを1本1本丁寧に離断して最終的にナイダスを摘出しました。

術後の脳血管撮影です。AVMは完全に消失しており(摘出されており)、右内頸動脈瘤もクリッピングされ消失しています。

術後のMRI(T2 強調画像)です。AVMは完全に摘出され脳の損傷はありません。
患者さんは神経脱落症状なく自宅へ退院されました。

症例2

30歳代の女性です。頭痛と軽度の意識障害(JCS I-1)で発症されました。頭部CTで左側頭葉の脳内出血を認め脳血管撮影で左側頭葉のAVM、Spetzler-Martin分類のgrade 3と診断しました。

術前に塞栓術を行ったのち、開頭摘出術を行いました。
シルビウス裂の正常血管からAVMに入る流入動脈のみを選択的に離断して摘出して行きます。

術後の脳血管撮影とMRIです。AVMは完全に摘出されておりMRIでも新たな脳の損傷はありませんでした。神経脱落症状なく自宅へ退院されました。

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