転移性脳腫瘍について – 奈良県総合医療センター

転移性脳腫瘍について

転移性脳腫瘍とは、身体のどこかにできたが癌が脳に転移したものです。全脳腫瘍の16%以上、癌患者の約10%を占めると言われていますが、人口の高齢化と医学の進歩により、増加傾向にあります。肺癌や乳癌、大腸癌からの転移が多く見られます。もともとの癌(原発巣)が無症状の段階でも、転移した脳の病変によって初めて症状を呈して発見される事もあります。

 

 

転移性脳腫瘍の症状について

脳は頭蓋骨という固い入れ物の中に入っています。転移性脳腫瘍では、腫瘍周囲の脳組織に強い腫れが生じるために脳の容積が増加します。腫瘍の分も容積が増加するために、頭蓋(骨)内の圧が上昇して、頭痛や嘔気・嘔吐、意識障害と言った症状(頭蓋内圧亢進症状)を引き起こします。また、腫瘍が周辺の脳組織を損傷したり、周辺の脳組織が腫れることで本来の働きができなくなったりする事で、機能障害を起こします。これは脳のどの部分に腫瘍ができるかによって、手足の麻痺や、言語障害、視覚障害など様々な症状(局所症状)を引き起こします。これらの症状は数週間の期間で進行することが多いのですが、てんかん発作や腫瘍内部での出血による急激な腫瘍の増大によって、急速に症状が進行することもあります。

 

 

治療について

転移性脳腫瘍には化学療法が効かないことが多いので、治療は手術による摘出と放射線治療、保存的治療におる頭蓋内圧のコントロールやてんかん発作のコントロールが中心となります。患者さんの年齢や全身状態を総合的に検討し、患者さんやご家族の方、原発巣の主治医、放射線治療科と相談して治療方針を決めていきます。
手術では、全身状態が良好で、重篤な後遺症が予想されない部分であれば、2.5cm以上の単発病変や摘出によって患者さんの障害が速やかに改善される事が予想される症例に対しては、摘出術を行います。小脳病変では、脳ヘルニアを生じて重篤な状態に陥ることが多いため、これより小さな腫瘍でも摘出手術を行うことがあります。様々な検査でも原発巣が判明せず、診断を確定してその後の全身に対する治療方針を決定する目的で病変を摘出することもあります。
また、手術治療は腫瘍の摘出だけではなく、嚢胞性腫瘍に対してオンマイヤーリザーバーを留置する事もあります。また、腫瘍が脳を包む硬膜や脳脊髄液腔に広範囲に転移して水頭症を生じた際には、生活の質(quality of life; QOL)を改善する目的でV-Pシャント術を行う事もあります。
放射線治療には、脳全体に放射線を照射する“全脳照射”と、病巣に対してミリメートル単位の精度で多方向から放射線を集中させることで、周辺の正常脳組織への照射を極力減らす“定位放射線照射(治療)”があります。多数の病巣がある時には全脳照射を選択しますが、全脳照射では数ヶ月後に認知機能障害が出現する可能性があります。そのため、数個以内の転移巣には定位放射線照射(治療)を選択し、頻回にMRIで経過観察する事で新たな病変の出現や腫瘍の再増大を早期に発見し、その後の治療方法を検討します。
しかし、全脳照射では小線量ずつ複数回に分けて照射するため、照射に数週間を必要とします。また、定位放射線照射では、長径3cm以上の病変に対しては治療成績が不良です。このため、手術により重篤な後遺症を残さない部位であれば、多病変でも大きな病変のみを摘出して放射線照射を併用する事も行います。

 

 

実際の手術例

症例1

60歳代男性の患者さんです。直腸癌の術後約2ヶ月に左片麻痺と構音障害で発症され、日常生活動作に介助を要する状態でした。術前のMRIでは、右頭頂葉と両側の小脳半球に転移性脳腫瘍を診断されました。

 

頭頂葉病変の周辺には強い脳浮腫を認めており、これが左片麻痺の原因となっています。腫瘍長径が4.2cmありましたので、開頭手術で摘出しました。その後,小脳病変には定位放射線照射を行いました。その後は10ヶ月半の間、ご自宅にて自立した生活を送られました。

 

症例2

60歳代の女性です。頭痛と意識障害で発症されました。MRIでは右前頭部の単一病変であり、全身検索では肺に単一病変を認める以外に病変が指摘できませんでしたので、意識障害の早期改善と病理学的診断確定の目的で開頭手術を実施しました。病理診断は腺がんであり、遺伝子検査の結果で分子標的療法を開始しました。分子標的療法が非常に奏功し、右下の写真は4年10ヶ月経った現時点のものですが、元気に外来通院しておられます。

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