下垂体腺腫の治療 – 奈良県総合医療センター

下垂体腺腫の治療

下垂体腺腫について

下垂体は脳の正中部でトルコ鞍と呼ばれる頭蓋骨の凹みの中に存在しています。
サクランボのようにぶら下がっている重さ約700mg、大きさは約1cmぐらいの小さな脳組織です。下垂体は、様々なホルモンを分泌して,全身のホルモン濃度をコントロールするコントロールセンターの様な役割を果たしている組織です。下垂体にはいくつかの腫瘍が発生する事がありますが、その大部分は下垂体腺腫で良性腫瘍です。下垂体腺腫は、特定のホルモンを過剰に分泌するもの(ホルモン産生性下垂体腺腫)とホルモンを分泌しないもの(非機能性下垂体腺腫)に大別されます。

 

① 非機能性下垂体腺腫

ホルモンを分泌しない腺腫です。下垂体腺腫の中で最も多いタイプで全体の約40%程度を占めます。近年MRIなどで小さな腺腫が偶然発見される場合も多いですが、一般的には腫瘍が大きくなり視神経を圧迫するようになると、視野狭窄や視力低下などの目の症状で発症します。視野の障害は両耳側半盲といって、両目とも外側の視野が欠損してきます。具体的には人混みを歩いていると斜め前から来る人とよくぶつかるようになったり、屋内では壁に肩をよくぶつけるようになる等の症状です。従って症状を出す頃には、腫瘍がかなり大きくなっている事が多いのが特徴です。また腫瘍によって正常下垂体が圧迫されて機能が低下し、易疲労性や無月経,性欲低下などの下垂体機能不全の症状をしばしば呈します。手術による摘出が治療の第1選択です。

 

② プロラクチン産生下垂体腺腫

プロラクチンというホルモンを過剰に分泌する腫瘍で全体の約30%程度を占めます。女性に多い腫瘍で女性の場合小さい腫瘍で比較的若い年齢で発見される事が多く、月経異常(無月経、不妊)や乳汁漏出(妊娠していないのに乳汁がでる)が主たる症状です。男性の場合にはインポテンツや女性化乳房を生じますが、腫瘍が大きくなるまで発見されず目の症状で発症することも少なくありません。
薬物療法(ドーパミン作動薬)が治療の第1選択です。

 

③ 成長ホルモン産生下垂体腺腫

成長ホルモンを過剰に分泌する腫瘍で全体の約20%程度を占めます。大部分は成人発症例で手や足が大きくなり特徴的な顔貌へと変化する先端肥大症といわれる病態を呈します。若年例では異常に身長が伸びる巨人症となります。中年以降に久しぶりに会った知人から顔貌が変化している事を指摘されて(毎日顔を合わすご家族には気づかれない)診断される事が少なくありません。高血圧症や糖尿病の原因にもなる疾患です。手術による摘出が治療の第1選択です。

 

④ 副腎皮質刺激ホルモン産生下垂体腺腫(クッシング病)

副腎皮質刺激ホルモンを過剰に分泌する腫瘍です。肥満や満月様顔貌、高血圧症や糖尿病、骨粗鬆症などを引き起こします。
手術摘出が最も有効な治療手段です。

 

⑤ 甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腺腫

甲状腺刺激ホルモンを過剰に分泌する腫瘍で、稀な腫瘍です。甲状腺の機能亢進に基づく頭痛、急激な痩せ、手の振戦、動悸、不整脈、精神症状などを発症します。甲状腺疾患と診断され、甲状腺の治療を受けていることも少なくありません。
この腫瘍は大きな腫瘍であることが多く、視機能障害を呈することもあります。

 

 

下垂体腺腫の治療ついて

下垂体腺腫に対する手術には、経鼻的手術(経鼻的経蝶形骨洞的腫瘍摘出術)と開頭手術(開頭腫瘍摘出術)があります。特別大きな腫瘍を除いて、下垂体腺腫に対しては経鼻的手術が標準的手術です。当科では内視鏡を使用した経鼻的手術を行っています(症例によっては従来からの顕微鏡手術も併用します)。
内視鏡手術の利点は、従来の顕微鏡手術に比べて、手術野が広く、明るいうえ、顕微鏡手術では到達出来ない部分にも到達できる事です。この手術の発展は光学器機の進歩に依るところが大きく、当科では2014年よりハイビジョンタイプの神経内視鏡を導入しました。
ハイビジョン神経内視鏡は従来の内視鏡に比べて約7倍の解像度があり、術中に微細な構造まで鮮明に確認出来るようになりました。その結果、手術においての積極性や確実性と安全性が飛躍的に向上しています。手術の際にはナビゲーションシステムを併用しています。狭くて深い術野の操作を行うので、操作している位置をナビゲーションシステムでリアルタイムに確認できることは、手術の安全性や確実性の向上に役立っています。

 

 

当科での最近の手術例

下図は下垂体腺腫例に対するハイビジョン神経内視鏡下手術時の術中写真です。
左図はトルコ鞍の硬膜を切開し腫瘍を摘出しているところで右図は摘出後に止血操作をしているところです。鮮明で広い視野が確保され確実な手術が実践されています。

 

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